AE波の発生と伝播A

一方、二次アコースティックエミッション(AE)発生源と呼ばれるものに、機械振動や、摩擦、あるいは漏洩に起因する音源がある。これらは、回転装置の異常診断、弁の漏洩検出などプラントの状態監視や、工場における設備診断に広く適用される。

最近地上タンクの底部や、埋設配管の腐食損傷診断へのアコースティックエミッション(AE)法の適用が注目されている。これらの構造物で、活性な腐食の進行により局所的に腐食生成物のはく離や割れなどが発生すると、微小なエネルギーを持つ弾性波が放出される。こうした腐食に起因する一次アコースティックエミッション(AE)源による弾性波は、通常数百Hzから数百kHzにわたる広い周波数帯域を有する。この波動において、可聴域(一般的に15〜20kHz以下)より高い周波数帯域(超音波領域)の成分がアコースティックエミッション(AE)信号として検出される。交通騒音などの雑音は、ほとんどの場合可聴域に主成分をもつため、超音波領域を対象とするアコースティックエミッション(AE)信号の計測により、環境雑音の影響を受けずに、効率よく腐食に起因する弾性波信号を検出することが可能になる。

タンク底板裏面の腐食で発生したアコースティックエミッション(AE)波は、図に示されるように、底板や側板、あるいはタンク内の貯蔵物(液体)中を伝播する。タンクの直径が小さい場合、液体を伝播するアコースティックエミッション(AE)波に加え、底板及び側板を伝播したアコースティックエミッション(AE)波が検出される可能性があるが、直径が大きくなるとこうした波動は減衰により検出されなくなり、伝播減衰の小さな液体中を伝播した波動のみが検出されることになる。